kolmas.tech note

雑記と思索、偏った技術の覚え書き

電車平仮名カード

電車好きの自閉傾向長男に平仮名を覚えさせようと、随分以前に作ったものの紹介。

お手製電車平仮名カード、山手線の部。子供らには「ひらがなカード」と呼ばれている。

自閉傾向長男の療育の中で、PowerPointのスライドにひらがなを大きく表示して見せて、声と合わせてその読みを教えたり、三文字程度の単語を読むか読ませるかしながらその対象の写真を切り替えて見せたりする事で、ひらがなを読む能力を獲得させんとするものがあった。継次的刺激ペアリング手続き、と呼ばれる手法らしい。ただ、長男の反応は正直な所いまいちであった。これに対して、長男の好きな主題で似たようなものを作ったら好んで取り組んでくれるのではないかと思い立った。

長男が明確に好きな主題と言ったら電車である。それも新幹線ではなく、在来線、しかも普通列車用車両を好む。関東圏のJR沿線に住んでいることからJRの在来線車両を見る機会がよくある他、本を見せて教えた1結果もあり、見た目に区別しやすいJR東日本普通列車用車両については概ね路線名を言える。これを題材にしない手はない。

作成過程

カードは以下のように作成。

  1. 扱う路線を選定。長男がよく知っている路線の他、JR東日本管内の路線をいくつか選ぶ。今回は分かりやすさのため、濁点・半濁点・捨仮名を含まない路線名に限定。また、見た目で区別出来るように、その路線に固有のデザインの車両を持つ路線に限定。
  2. 当該路線を走る普通列車用車両の写真を選定。Wikimedia Commonsから調達2する。
  3. 右半分に同一サイズにトリミングした電車の写真、左半分に平仮名一文字のPowerPointスライドを作る。山手線であれば、同じ写真で「や」「ま」「の」「て」「せ」「ん」の六枚を作成。フォントは将来の書字への発展を期して教科書体。
  4. A4用紙に印刷してラミネータにかける。パンチで穴を開け、路線毎にリングで束ねて出来上がり。

作成したスライドをPDF出力したもの3は以下である。利用している写真素材のクレジットもPDF中に記載している。

まず試しに作ってみた、ということもあり、全ての平仮名を網羅している訳ではない。「を」は流石にどうしようもないとしても、濁点・半濁点・捨仮名を除外する縛りが案外とキツい。以下ページを参考に路線をピックアップした。 www.chikipage.net 上掲スライドに含まれているものでは、例えば青梅線4などはかなり厳しい。中央線を知っている長男は、最初見た時に当然「ちゅうおうせん」5と言ってきた。「先頭にこの黄緑の丸6が付いているのは青梅線」と言って丸め込んだが、鉄道に詳しい方に聞かれたら怒られるに違いない。他にも、羽越線米坂線辺りは全く自信がない。自信はないが、その辺も入れないと平仮名の幅が増えない。

その他、作って利用してはいるものの、紛らわしさがあるので上掲のPDFからは除外している路線もいくつかある。例えば大船渡線7である。キハ100系の写真を入れているのだが、キハ100系、同じ塗装であちこちのローカル線を走っているせいで、それら他路線を選定できなくなってしまった。 ja.wikipedia.org

実際に使ってみて

カードの見た目の長男からの第一印象はとても良かった。長男向けに作ったものだが、次男にも気に入られた。好きな電車の写真を大きく載せているのがやはり良いらしい。今でも時々、二人とも「ひらがなカードやる」と声を掛けてきてくれる。

まず最初に行ったのは、私の方が一枚ずつカードをめくりながら、対応する平仮名を一文字ずつはっきり読み上げる事である。冒頭掲載の山手線の部であれば、まず最初に「や」と言い、素早くめくって「ま」、まためくって「の」、、、と言った具合である。この時、少し大袈裟なくらいはっきりくっきり、大きめの声で読み上げる事が重要だと思う。その話は以前のエントリにも書いた。もちろん、子供らが写真だけでなく隣の文字にも目線を向けているかは意識しないといけない。

次の段階は、この一文字ずつの読み上げを私と子供らで一緒に行う事である。題材が子供らの大好きなものだからか、この段階にはすんなりと進む事ができた。さらにそこから進んで、私と子供らで交互に一文字ずつ読んだり、さらには私が一切読まなくても、促す事で一文字ずつ声を上げる事が出来るようになった。

ただ、この段階に来て長男と次男で差が出てきた。現状の様子から述べると、丁度満三歳になったところの次男は、この電車平仮名カードに含まれていないものも含め、概ね全ての平仮名が読めるようになっている。電車平仮名カードをやっているうちに、平仮名を読む事自体にも興味が出てきたようで、下掲の平仮名と電車の本を妻や父8に読んでもらって概ね覚えてしまったようである。たまに「き」と「さ」を間違えたりもする9が、その間違いが出るという事はつまり、場面で音を覚えているのではなく、ちゃんと文字を読んでいるという事である。

一方で長男は、まだその段階には到達していない。最近、カードをめくる時に文字ではなく写真の方に視線が向いていて、文字を読んでいるというよりも知っている電車の名前を読み上げている、即ち先の表現で言うところの「場面で音を覚えている」節がある。文字を読むことにはまだ興味が薄いのだろう。ただそれでも、頻出する文字10や、特に好きな路線の文字であれば、文字だけでも読めるものもあるので、一定程度の効果は出ているように思う。

今は、先の使い方に加えて更に、カードの左下に小さく書いておいた単語としての路線名を読ませる、ということも時々試している。次男については、文字を読むことから更に進んで、文字の連なりを順に読むことで語や文になる事を理解させるのが目的である。長男については、上述の通りカードをめくりながら路線名を一音ずつ読むという場面を覚えてしまっている節が見受けられるので、今一度文字を意識させるため、やり方を変えてみる試みである。


  1. 親である私自身も、鉄分が濃いとはとても主張出来ないものの、鉄道が好きなので。
  2. 有り体に言えば、Wikipediaの当該路線記事から良さそうな写真を見つけてきた。記事更新により今は当該記事から参照されていないものもあるが。
  3. 公開用の注意書きを付けてある。
  4. 「め」が欲しかった。
  5. 尚、中央線は捨仮名「ゅ」を含むので除外されている。
  6. 「東京アドベンチャーライン」のヘッドマーク
  7. 「ふ」と「な」が欲しかった。
  8. 私の父、即ち子供らにとっては祖父。
  9. 間違いに気付いて自分で訂正することもある。
  10. 例えば「せ」と「ん」