網が好きである。「あみ」ではなく「もう」、つまり広義のネットワークの事である。この嗜好がどうして成立したのかは分からないし、今もなぜ好きなのかと問われたら明確に答えられないのだが。
鉄道路線図を無限に見ていられる
関東圏のJR東日本沿線に住まう私にとって、通学・通勤時の電車内には昔から東京近郊路線図があった。以下リンク先にて「東京近郊路線図(車内掲出版)」として公開されている。 www.jreast.co.jp 通学中の暇な電車の中で、これをよく眺めていた。おかげで、大体どの辺でどの路線がどう繋がっているのか、何となくは捉えられている1。これは見ていて楽しい図である。
最近、子連れで東急に乗る機会が時々ある。こちらの車内にも、東急全線の路線図が掲示されていて、余裕がある時には眺めている。東急の全線路線図も、走っている地域が限定的な割に複数路線が入り乱れていて、見ていて楽しい。
大学時代は小田急ユーザであった。上述の東京近郊JRや東急と比べると、小田急の全線路線図はかなりシンプルである。その点で見応えは若干劣るものの、これも電車内で見かける度に眺めていた。
その点では、新幹線の路線図も、現状ではかなり直線的で見応えに欠ける。基本計画路線が全部通るような事があれば2、とても見応えのある路線図になりそうには思える。 ja.wikipedia.org どうやら私は、直線的なネットワークよりも、メッシュネットワークの方がより好みであるらしい。
大分昔にこんな本も買った。古今東西の様々な鉄道路線図が収められている。これもずっと見ていられる類の本である。
高速道路網と高速道路標識を愛でる
高速道路網も好きである。高速道路上に点在するインターチェンジやサービスエリア・パーキングエリア、さらに複数の高速道路を接続するジャンクションからなるネットワークを書き表した路線図を、これまたずっと見ていられる。首都高等の都市高速の路線図も良いし、広域輸送網を形作る全国の高速道路網の路線図もまた良い。
高速道路上、インターチェンジやジャンクションに設置されている緑色の標識も好きなものである。これらは、それぞれの場所の視点から局所的に高速道路網を説明していると言える。暇つぶしの一つに、Wikipediaの高速道路ジャンクションの記事を巡るというものがある。記事に掲載されている、ジャンクションの分岐点に設置されている標識の写真を愛でるのだ。
高速道路が子供の頃から身近なものだったということも影響しているかもしれない。父方の実家が高速道路利用で自宅から二時間程度かかる所にあり、年に数度そこまで墓参りに行っていた。一方、母方の実家はその半分程度の距離の所にあり、高速道路でも一般道でも行ける場所だった。運転する父親に、高速道路が良いとせがんでいた記憶がある3。
ところでジャンクションといえば、例えば以下のような記事で見られるように、その構造体の格好良さを愛でるという界隈がある。 dailyportalz.jp 私も、ジャンクションという土木構造物に対して格好良いという感覚はあるので、このような記事も時々読む。ただ、その感覚は本エントリ主題の「網好き」の感覚とは違うようである。ジャンクションそれ自体も、ミクロ視点で見れば、分岐と合流を繰り返す網であると言えそうだが、それに対して「網好き」の感覚は働かない。不思議である。
その視点で先の鉄道の話題に戻ると、駅や車庫のような拠点の配線図にもあまり興味がない。これも網であるはずだが。以下のようなサイトを見ると、面白そうだな、とは思うのだが、上述のような路線図を見たとき程のときめきは感じない。これも不思議である。 www.haisenryakuzu.net
コンピュータネットワークとルーティング
一応コンピュータ関連を専門領域にする者として、網の話をするならコンピュータネットワークの話題は欠かせない。
例えば以下のようなウェブサイトなど見ていて楽しい。ここでは、インターネットを支える海底ケーブルの敷設状況を可視化している。 www.submarinecablemap.com
このようなL1=物理層の話題に関しては、この「網好き」の感覚が良く働く。特に、それこそ上掲の海底ケーブルにも当てはまる事だが、広域接続の話題が好みであるようである。ホームネットワーク等の末端ネットワークにおける大方のネットワークトポロジはスター型であり、ある意味単調で「網好き」の感覚があまり働かない4。これは上述の鉄道網の好みの違いにも通じる感覚であるようだ。
そして、L2・L3になってくると、これまた「網好き」感覚があまり働かない。物理的な意味でのネットワークの上で、どのような流れで情報を通すか、という観点は「網好き」感覚からは離れた所にあるらしい。尚、L2・L3の仕組みも、それはそれで私にとって面白いものではある。それらはレイヤが違うとはいえ不可分な話題であるので、好みの機序が分かれるのは不思議である。
その観点に気付いてみると、鉄道網や高速道路網にも同様の感覚があるように思える。即ち鉄道網でいえば、網を愛でる感覚は、その網の上を走る列車や、そこに乗る乗客のルーティングには、当てはまらない。むしろ、どのようなルーティングがなされる事になるかを想像しながら、物理的な網を愛でている。高速道路網についても同様である。
幹線網が好き?
ここまで書いてきて浮かぶもう一つの不思議な点は、どうやら私は幹線の網が好きらしいという事である。
道路網で言えば、先程来話題にしている高速道路であるとか、もしくは国道・県道などの幹線が構成する網を好む一方で、地域の生活道路のようなものにはそれほど興味がない。これも明らかに網である筈だが。網の末端という意味では上述の末端コンピュータネットワークの話題にも似ている気がするが、生活道路などというものはそれこそ複雑なメッシュネットワークであって、先の話題はそのまま当てはまらない。
ネットワークの節5の密度が高過ぎるのが、どうも好みでないらしい。その理由は恐らく二つある。
- 単純に、その網を愛でようとした時に、頭の中で網の全体像を把握しきれない。把握しきれないものを愛でようがない。
- 鉄道網や高速道路網等、物理的に節を多く置けない低密度な網において、その制約の中で網がどのように設計されているのかが面白い。
上述の、個々のインターチェンジやジャンクションの分岐・合流の構造や、鉄道における拠点の配線図等といった、ミクロ網に対して「網好き」感覚が働かない事も、同じ理由で説明出来そうな気もする。その粒度で考え始めたらマクロ視点での網の全体像は把握しきれなくなるし、マクロ視点でいる方が楽しいのだ。
物理的な広域インフラの設計を愛でる
ここまでの考えをまとめると、私の好きな網は、メッシュ状の広域接続を担う物理的なインフラをマクロに捉えたものである、と言えそうである。鉄道網も高速道路網も、インターネットの物理的な広域インフラも、これに当てはまる。
インフラといえば、分野を問わずインフラ屋さんには頭が上がらない。問題なく動いている間は特に感謝もされないのに、問題が起こった時にはひたすらに批判される不条理。インフラ屋さんへの感謝を忘れずにいつつ、その仕事の結晶たる網を愛でるのである。
余談 ー Mini Metroは良いぞ
Dinosaur Polo Club社が開発したゲーム「Mini Metro」は、「網好き」の心に響くとても良いゲームである。時間と共に増大する駅と乗客を捌く地下鉄路線網を作るパズルゲームである。一ゲームの時間がとても長いという類のものではないが、気付くと時間が溶けている系のゲームである。 dinopoloclub.com
同社のゲームには道路網を敷設する「Mini Moterways」もあって、こちらも楽しい。ただし、「網好き」の観点のみから見るとMini Metroの方が強く刺さる。Moterwaysの方は、出来る限り交差点を作らないのが高スコアの肝なのだ。 dinopoloclub.com
